駄文

500円コース 11


後日、俺の家に見慣れない封筒が届いた。宛名だけが書かれていて差出人の名前が無い。不思議に思いながらも部屋に戻って封を切って入っていた手紙を開いた。

藤崎望様へ
この度は500円コースをご利用いただきましてありがとうございました。
“素敵な恋人が出来ますように”という貴方様の願いが無事叶いましたことを見届けました。
心から祝福します、おめでとうございます。
何かございましたら、またご来店ください。

あれは夢なんかじゃなかったのか!でもこの願いのおかげで先輩と恋人になれたというのなら、もしかしたらこの願いのせいで先輩が俺のことを好きになってしまったという可能性があるんじゃないのか?俺が先輩のことを素敵な人だと思ったせいで、先輩の心を歪めてしまったとしたら大変だ。焦りと、悲しさを感じながら他に何か書かれていないかとひっくり返すが白紙。もう一度封筒のなかを確認すると1枚入っていた。

ご来店いただいたときに説明しましたとおり「人の感情を歪めて欲しい」という願いは受け付けておりません。
ですからお相手の感情を操作したことは一切ございませんのでご安心ください。
私達は運命の相手と出会えるようにお手伝いさせていただきました。

俺の心を読んだかのような文章に驚いたけれど、運命の相手を出会わせた。という言葉にも驚く。運命を信じたことはなかったけれど、俺と先輩がそうだというのなら嬉しい。けれど500円を支払った記憶が無い。不思議に思いながらも財布を確認してみると、あったはずの500円玉が一枚減っていた。

2018.10.16

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